こんにちは。

飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

サードプレイスで摂食障害のための認知行動療法、CBT-Eをはじめて約一ヶ月が経ちました。この一ヶ月間で、実に20年以上摂食障害に悩んでいた患者さんの「過食エピソード」がなくなってしまいました。

これは本当に、本当にすごいことなのです。

「過食エピソード」とは、しばしば大量の食べ物を食べることで、食べている間は自分でそれをコントロールできないような感じ、例えば、満腹で苦しくなっても食べることをやめることができないようなことで、その後、大量の食物摂取と帳尻を合わすため、嘔吐や下剤使用、過剰な運動をする人がいます。

過食エピソードは摂食障害の患者さんの悩みと苦痛のタネであり、これをきっぱりとなくすのは今まで至難の技とされてきました。それは一進一退を繰り返し、年単位でみると改善してきたかな・・・という状態で、果たして治療が効いているのか、それとも患者さんの人格的な成長によってそれが成し遂げられているのか判然としなかったくらいなのです。

CBT-Eをはじめてみて感じたことですが、これは普通のいわゆる日本で普及している認知行動療法(Cognitive Behavior therapy :CBT)とはずいぶんと違うなってことです。

ここで説明しておくと、CBTは、本来は様々な技法の総称ですが、日本ではしばしばアーロン・ベックの認知療法を指しています(保険適用にもなっています)。認知とは「ものの受け取り方」や「考え方」という意味であり、アーロン・ベックのCBTでは、自動思考と呼ばれる、ネガティブな気持ちを引き起こすような認知の歪みを修正し、さらにスキーマと呼ばれる捉え方の根底的な部分にも焦点を当ててうつや不安を改善していきます。

CBTとCBT-Eの違いは、例えば、「自転車に乗れるようになる」という目的が同じでも、そのアプローチの仕方です。

CBTアプローチでは、患者さんとセラピストはまずは自転車を目の前に置き、腰を据えて、「自転車に乗ろうとする時にどんな気持ちになるか」的な会議を開きます。患者さんが弱気になって「自分にはとても無理だ」みたいなことを言い出すので、セラピストは「その頭にかすめている(弱気な)考えは、自動思考かもしれませんね」とさりげなく伝え、「その考えに根拠はあるのですか」「それって本当なのですか」などと毅然と質問することで、患者さんが今まで当たり前と思っていた自分に対する認識に改めて目を向け、考え直しができるよう促します。また自転車を前にした患者さんの緊張を和らげるために、リラクゼーション法を実施したりもします。そんなことを続けていると、そのうちに患者さんも自分の過去の成功体験を思い出したりして「今まで難しいって思ってきたことも実現してきた、だからもしかしたら自転車も練習すれば乗れるようになるかもしれない」みたいな当たり前な考え方ができるようになってきて、前向きな気持ちにもなってくるものです。そうすればいよいよ練習がはじまります。セラピストが実際に乗って見せてそのコツを教えたりすることもあります。そのようにして練習を重ね、だんだん上手に乗れるようになるのです。

CBT-Eアプローチでは、セラピストはいきなり自転車を持って患者さんの前にあらわれます。そして「さぁさぁ乗ってみなさい」とまだ乗れるかどうか半信半疑の患者さんを半ば強引に乗せて後ろを支えながら「さぁ、こいでみましょう!」と励まします。患者さんがオソルオソルこぎ出すと同時にセラピストも後ろを支えながら駆け出して「ハンドルをまっすぐ!」とか「前を向いて!」とか「とってもいい調子ですよ」などと声をかけながら押します。患者さんが途中で「こんなの無理かもしれません」と弱音を吐いても「ちゃんとできてますよ、もっとこいで!」「頑張りましょう!」と走り続けます。

この「勢い」で患者さんはあっという間に自転車が乗れるようになるのです。

CBT-Eを開発したフェアバーン先生は「成功のコツは最初の勢いのせて、上手にはじめること」と話しています。

CBT-Eは全20セッションです。1ヶ月で8セッション終えますが、もう自転車に乗れるようになった(過食エピソードがなくなった)ので、これからの12セッションはすこしテンポがゆっくり目になります。

患者さんと共に、ひきつづき頑張りたいと思います。

●摂食障害のための認知行動療法、CBT-Eとの出会い☞こちら

ではまた!

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投稿: 飯田橋 サードプレイス

東京千代田区飯田橋にあるカウンセリングルーム、サードプレイスのブログです。

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